舞台 「奇跡の人」


奇跡の人2014天王洲アイルの銀河劇場に「奇跡の人」を観に行ってまいりました。

2014年10月11日(土) 12:30~
上演時間:3時間10分
1幕 55分
休憩 10分
2幕 65分
休憩 10分
3幕 50分

天王洲 銀河劇場
座席は S席 1F I列 上手ブロック
8,800円
作:ウィリアム・ギブソン
演出:森新太郎
出演 :
アニー・サリヴァン 木南晴夏
ヘレン・ケラー 高畑充希
ケイト・ケラー 馬渕英俚可 
アーサー・ケラー 立川三貴
ジェイムズ・ケラー 白石隼也
エヴ伯母 梅沢昌代 
ヴァイニー 平田敦子 

有名なヘレン・ケラーの物語です。
見えない、聴こえない、話せないの三重苦を抱えるヘレンが家庭教アニー・サリヴァンによって「物には名前がある」ことを知り、世界と再びつながるまでが描かれます。

chirosukeはこの舞台は4回目であります。
この舞台は数多く上演され、多くの女優さんがアニー・サリヴァンとヘレン・ケラー役を演じています。

最初は数十年前・・・高校生の時学校の授業の一環で観た「某関西の劇団」の舞台です。
その劇団は活動の中で学校向けに「巡業公演」を行っていますが、当時の演目が「奇跡の人」だったんですね。

演劇部にいたchirosukeは「授業中にタダでプロの芝居が観られてラッキー」と思っていました。
確かに舞台は「プロ」の手によるものでした。
セットも演技も、高校演劇コンクール等とは比べ物にならないクオリティでした。

chirosukeは舞台で衝撃を受けたのが「奇跡の人」という意味に気づいたこと!
コドモchirosukeの時に読んた伝記「ヘレン・ケラー」で物語の内容は知っていたつもりのchirosukeでしたが、舞台を観て「奇跡の人ってアニー・サリヴァンのことじゃないか!!」と目からウロコでありました。

真面目な高校生だった演劇少女chirosuke、鑑賞後の「感想文」には舞台の事より、物語の内容について感動を綴ったことを覚えています。
まさに、「学校教育の演目」として教師の思惑通りの反応だったことでしょう・・・。

で、舞台の演技についてはアニー・サリヴァン役が当時の劇団の看板女優さんだったということくらいしか覚えていません。

その後chirosukeは図書室で戯曲「奇跡の人」を借りて夢中で読みました。
良くできています。
読んでいるだけで涙目になるくらい感動しました。
ということは・・・
ウィリアム・ギブソンの脚本を真面目に演じればまず失敗は無いということなんでしょうか?
なんと無難な演目だろう・・・と関西の田舎の公立高校演劇部所属の演劇少女chirosukeは思ったものです。
世間知らずのchirosukeでありました。
その後chirosukeはその劇団とは違う別の「某劇団付属演劇研究所」で演劇を学ぶことになり、少しは世界が広がりました・・・。

そんなchirosukeが数十年後オトナになって観た2回目・3回目の「奇跡の人」は以下です。
2003年 演出:鈴木裕美
アニー・サリバン役:大竹しのぶ
ヘレン・ケラー役:鈴木杏

奇跡の人20092009年 演出:鈴木裕美
アニー・サリバン役:鈴木杏
ヘレン・ケラー役:高畑充希

大竹しのぶさんのサリヴァン役は迫力がありすごかったです!
しのぶちゃんと戦うヘレン役の鈴木杏ちゃんも負けていません。
ものすごい緊張感がありました。

3回目では、ヘレンを演じてた鈴木杏ちゃんがアニーを演じていたことに灌漑深かったchirosukeです。
しのぶちゃんの迫力とはまた違う、若いパワーに溢れたアニー・サリヴァンでした。
実際にヘレンに最初会ったアニーは20歳でしたし。
その時のヘレン役、高畑充希ちゃんにchirosukeは驚きました。
何て愛らしいのでしょう。
そして、何て表情豊かなヘレンなんでしょう~!
高畑充希ちゃんといえばピーターパン役しか知らなかったchirosukeです。
(ピーターパンについては2011年7月26日のブログをみてね)

今回はサリヴァン役は木南晴夏さん、ヘレン役は5年ぶりの高畑充希さんです。

chirosukeの感想は・・・
新演出とのことでしたが、大筋は変わっていませんでした。
舞台装置がなかなか良かったです。
三方に高くそびえたつ壁、沢山のドアと窓が象徴的です。
広いので圧迫感はありませんが、今までの演出と違って2階部分がありません。
2階での演技も家具などが違っていますが、同じ場所で演じられます。
下手のドアが上手の窓、ドアとつながっているように演じられます。
下手の窓が2階とみなされている時は、2階の窓からでたアニーを上手で別の人物たちが上を見上げて待ち受けているという構図です。
ごく自然に上手と下手がつながってchirosukeはエッシャーの絵のようだと思いました。
ちょっと不思議な感覚ですが違和感はありません。

三方の壁が外界から遮断されたヘレンの心のようでした。
沢山のドアは過去や別の場所と自由自在につながって面白かったです。

ヘレン役の高畑充希ちゃんは見事というほかはありません。
愛らしさもですが、表情が素晴らしいです。
癇癪をおこしてふくれるシーンや、不安な表情、人形を抱いて喜ぶ顔、アニーを出し抜いてしてやったりという表情、大暴れしながらも周囲の出方を探っているとき、心からの拒否の感情などが、顔だけでなく身体全部を使って演じられています。
chirosuke、感動しました。
これはもうヘレンそのものではないですか!

木南晴夏さんについては、chirosukeは映画「20世紀少年」の変顔女子高生役の印象であります。
chirosukeは「20世紀少年」にエキストラで出演した際に、撮影現場で木南晴夏さんを観ています。
かわいくて明るい雰囲気で、演技が巧いなぁと思っていましたが、舞台を観るのは初めてです。

木南さん、好演されていたと思います。
ただ、声がきれいというか発声がいかにも「舞台でございます」という感じで、最初chirosukeは「ん?高校演劇か?」と思っちゃいました。
(高校生さんゴメンナサイ)
学生演劇にありがちな、舞台特有の声を張り上げる独特なクセのようなものがあるんですね・・・。
声のトーンが高いのでよけいにそう思ってしまいました。
慣れてくるとあまり気になりませんでしたが、演出なのかなぁ。

舞台では、家庭教師サリバン先生というイメージはなく、アニーというひとりの女性の生い立ち、幼少期の過酷な生活、弟の死、失明等背負ってきた過去が描かれています。
9度にわたる手術を経て勝ち取った「光」は本当に尊いです。

過酷な施設のなかで見捨てざるを得なかった弟。
この弟の記憶が、劇中何度も繰り返されアニーを苦しめます。
でもアニーは決して「許して」とは言わないんですね。
悲惨な「救護施設」で守り切れなかった弟の幻に「大きくなったら学校へ行くわ!」と叫ぶアニー、chirosukeは涙目でありました。

「私の強み、かつて私も目が見えなかったということです」
「施設での暮らしはそれはもう酷いものでした。おかげで私は強くなりました」
「この世の中では誰にとっても生きていくことは困難なんです」
これらの台詞はとても重い・・・。

アニーはヘレンを障害者として扱わない、両親がいなくなった後自立して生きていくためにヘレンに生きる術を与えようとします。
そのために「憐れみ」は何の助けにもならないことをアニー自身が知っているんですね。
だから母親に向かって「ヘレンにとって一番の障害はあなたの愛です」と言い切れる。
ここのシーンは辛いです。
母親なればこその無償の愛を拒絶されるのですから。
それをわかったうえでヘレンを教育しようとするアニーの強さはどこから来るのだろう。
守り切れなかった弟への思いかも知れません。

この母親とアニーの戦いは、二人の「愛」のぶつかり合いのようですごいです。
母親役の馬渕英俚可さん、chirosukeが今まで観たどの母親役より強く、感情豊かでした!

一度は「わたしの娘を返して!」と叫びアニーから奪還したヘレンに対して、やはり「かわいそうな子=憐れみ」という愛で甘やかしてしまう母親を責めるなんてとてもできないです・・・。
その母親が再度、「この子をお任せします」とアニーの元に背中を押す場面ではchirosuke涙が止まりませんでした。
わけがわからず母親を呼ぶ仕草をするヘレンにも涙が止まらないchirosukeでありました。

アニーとヘレン、この二人の戦いはまさにガチのバトルです。
食堂でテーブル周りを歩き回り、手づかみで誰のお皿からでも好きな時に好きなものをとって食べるヘレンに、アニーはテーブルマナーを教えようとします。

このシーンは凄まじいです。
椅子を投げ、お皿を放り投げ、アニーに蹴りを入れ、大暴れでテーブルの下にもぐり込むヘレン。
ヘレンを引きずり出し、馬乗りになり、椅子に座らせ、ナプキンを付けさせスプーンを持たせるアニー。
ヘレンがスプーンを投げると、アニーは引き出しから数十本のスプーンを持ってきて投げるたびにヘレンの手にスプーンを握らせようとしますが、ヘレンも癇癪を起して大暴れ、すごいです。
まさに取っ組み合いが続きます。
客席からは「おおっ!」「うわ・・」というどよめき、そして笑い声が・・・。
緊張感のなかにも意表をつく動き、予想できないスピード感があるんですね。
しかもヘレンは目も見えず、音も聴こえないのですからガンガンあちこちにぶつかっています。
これは本当に演技ですか?と思うくらいの迫力です。

chirosukeはこの舞台が単なる「感動もの」だけでなく、エンタメになっていることにあらためて驚きました。

嵐の後のように荒れ放題になった食堂から、ボロボロになったヘレンが泣きわめきながら出てきて母親にすがり付きます。
そのあと同様に髪はぐちゃぐちゃ、服は破けたアニーがでてくると母親は疑いと怒りの目をアニーに向けます。
アニーは母親に静かに言います。
「ヘレンは椅子に座って自分のお皿からスプーンで食べました。」
驚く母親にさらにアニーは続けます。
「そしてナプキンをたたみました。食堂は滅茶苦茶ですが、ヘレンのナプキンはきれいにたたんであります」
ここはchirosuke、母親と一緒に号泣しました・・・。

後半は声を荒げながらヘレンに厳しく指文字を教えるアニーと、身体中で感情を露わに拒否するヘレンとの戦いもすごいです。

暴れ疲れて眠り込んだヘレンに優しく毛布をかけ、子守唄を歌うアニーのシーンにもchirosukeは涙目であります。
木南さん、きれいな声でこのシーン最高でした!

ラストのポンプから流れ出る水を手に受けながら、はじめて「物には名前がある」ということに気づいたヘレンの演技はトリハダものです。
指文字の「W・A・T・E・R」が水を意味するのだとわかり、指の動きが言葉として心に結びついた時、ヘレンが口を大きく開き両手の指を突っ込んで自分の中からコトバをひきずりだそうとするような演技にはchirosuke息をのみました。
決して「WATER」とは聞こえないけど、ヘレンは「WATER」と叫んでいるのがわかる。
咆哮のようなヘレンの叫びには心が揺さぶられます。
chirosuke号泣です。
ヘレンが世界とつながるキーワードを見つけた瞬間であり、外の世界がヘレンの中に雪崩れ込んでくるのが解ります。
ヘレンの驚きと感動、喜びが客席にも伝わり、アニーがずっとヘレンに言いたかった「そうよ!」という台詞はアニーの勝利でもあるでしょう。
残酷な世界に対してアニーが自らの力で一矢報いた瞬間でもあります。

ヘレンが「MOTHER」と指文字で綴り、母親に抱かれた後、アニーに対して「あなたは何というの?」と尋ねます。
「TEACHER、先生よ」と綴るアニー。

母親の三度目のヘレンとの別れは、ヘレン自身の選択でした。
ヘレンは自らの意志で母親の元から「先生」の元に歩み寄ります。
もうchirosukeは母親の気持ちを思うと涙が止まりませんでした。

新演出ではヘレン自らアニーを「先生」として家の中に招き入れます。
これからさらに世界とつながることを選択したひとりの少女の、次のステップを観たように思ったchirosukeでした。

chirosukeが最も好きなアニー・サリヴァンの台詞です。
『ヘレン、あんたに私教えてあげたいのよ! この地上にある全てを。
この地上にある全ては、あっという間にわたし達のものになり、また消えていく。
でも私達には言葉という光があって言葉を使えば後に残せるの。
五千年も昔を見ることだってできる。
私達が感じたり考えたり知ったり、それを伝えあったりする全てが言葉の中にあるのよ。
言葉さえあれば人間、暗闇から抜けだせる。
お墓に入っていることはないのよ。
私にはわかっている、よくわかってるの!
たった一つの言葉であんたはその手に世界を握りしめることができるんだわ。
でもどうしたら、いったいどうしたらあんたにそれがわかるの・・・?』

最初に戻ります。
昔chirosukeが感じた「この素晴らしいウィリアム・ギブソンの脚本を真面目に演じればまず失敗は無いということなんでしょうか?」という問い。
当たり前ですが答えは「NO」です。
失敗ではない舞台と、心を揺さぶられる舞台とは違います。
また、観る側の年齢、経験、状況によっても違ってきます。
だからこそ生の舞台は素晴らしいです。

「奇跡の人」、これからどんな女優さんたちの演技が観られるでしょうか。
東京公演は貸切を含め全15ステージ。
大阪公演はたった一日の2ステージのみ。しかも平日(火曜日)です・・・!
東京万歳!

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